2003年12月27日 “進化した入浴剤”

 

友人に入浴剤をもらった。

試供品のやつ。一回分の。

普段入浴剤は使わないのだけれど、

ま、せっかくだし入れてみることにした。

 

とりあえず入浴剤を入れる前に湯船につかり、

パッケージを熟読して気分を高めることにした。

こういうのは演出が大切だ。

「ツムラの日本の名湯・乳頭」

乳頭というのが温泉地の名前だろうか。

聞いたことがあるような無いような。有名なのだろうか。

詳しくない僕でも、登別や草津や別府なんかは知ってる。

でも乳頭ってとこはピンとこないのだ。

つまり、知る人ぞ知る的なラインナップを揃えた商品、

ということなのだろう。

それほどまでに最近の入浴剤は細分化されてるんだろう。

他にもイロイロ能書きが書いてある。

「温泉分析表をもとに、その特性をいかした

湯質になっています。」

なるほど。現代科学の力をもってすれば、

温泉成分をそっくりパッケージすることも

可能という事なのだろう。

ラドン温泉ってのもあるくらいだしね。

また、こうも書いてある。

「温泉情緒と風薫る新緑、色鮮やかな紅葉、白一色の雪景色など

乳頭山の麓にひろがる美しい自然を参考にしています。」

やられた。

温泉成分をそのまま復元したのでは、

真の意味で“温泉”を再現したことにはならないのだ。

これは浅はかだった。

 

と、大体こんなふうに商品を分析しているとき、

頭の中では中島みゆきの“地上の星”がBGMになっている。

開発者の苦労を“勝手に”想像してみることにする。

 

(田口トモロヲのナレーションで)

温泉成分を忠実に配合したのでは、何かが足りない、

開発者は行き詰まる。

温泉情緒、それだ…!

 

と、ここまで妄想をふくらませた時、

僕は〈使用上の注意〉に大変な事が書いてあるのに気が付いた。

●本品には浴槽・風呂釜をいためるイオウは入っていません。

…なんてことだ。開発はふりだしに戻ってしまった。

 

ツムラといえばバスクリン。

幼い頃、我が家でも使っていた記憶がある。

RGBのような蛍光グリーン。

ラムネ菓子のような強烈な香り。

今にして思えば、なぜバスクリンはあんなにも

自己主張が強かったのだろう。

あの頃はドブの水までバスクリン色だったように思う。

しかし、時代は流れ、今求められるのは“癒し”。

乳頭温泉を再現したこの入浴剤の香りは

四季折々の美しい自然を参考にし、

お湯は真っ白な乳白色のにごり湯を再現しているという。

再び開発者たちの顔が浮かぶ。勝手に。

完成までには幾多の困難があったに違いない。

しかし知恵と努力で乗り越えたからこそ、

いま僕の手元に商品が届けられたのだ。

感謝して使わせてもらおう。のぼせてきたし。

期待に胸ふくらませてパッケージの封を切ると、

バスルームいっぱいに広がったその香りは、

紛れもなく、あの日のバスクリンそのものだった。